Q:パラパラチャーハンが上手く出来ないのです。

子供も大人も好きな人が多いチャーハンですから、美味しいパラパラチャーハンを、是非ともご自宅でも作りたいですよね。
しかし、結構多くの方が、ご飯を中華鍋に焦げ付かせてしまったり、ご飯の粘りけが残ったままで米粒同士がくっついてしまったりしているようです。
どうしたら、パラパラチャーハンが出来るようになるのでしょう。


中華料理店の料理人が、どのようにしているか、ご覧になった方もいらっしゃると思います。
プロは、①十分温まった大きな「鉄」の中華鍋に、②多めに油をそそぎ入れ、③油の温度が調理温度に達したら溶き卵を入れ、手早くかき混ぜ、④卵が半熟状態になったらすぐ、ご飯を入れ、中華鍋を振りながら炒めます。
⑤途中で具を混ぜ、⑥最後に味を整え、チャーハンが出来上がります。
見ていると、本当に短時間で美味しいチャーハンが出来上がります。
プロと家庭では、何がどう違うのでしょうか。


まず違いそうなのは、調理温度のように見えます。
これが分かれば、大したものです。
プロは、常に鍋の表面温度には、細心の注意を払います。
それだけ、調理温度が重要だということです。
これまで、チャーハンが上手くできなかった方、調理温度にどのくらい注意を払っていたでしょうか。
調理温度と熱量、炒め物料理は、これで善し悪しが決まってしまいます。
是非、調理温度と熱量に敏感になって下さい。


正しい調理温度、そしてたっぷりの熱量。
美味しいパラパラチャーハンを作るには、これが大切ですが、これを決めるのが、「コンロの火加減」と「道具」です。
しっかり温まった炒め鍋から、正しい温度がたっぷり供給される必要があります。
最適な道具は、鉄板製の中華鍋・炒め鍋、そしてセラミックコーティングの炒め鍋です。
鍋の温度は、180℃です。


まず、コンロ上で鍋を温めます。
鍋の淵の高さに、手をかざして温度を感じて下さい。
ちょっと熱めの焚火、あたり始めは暖かくて気持ちがいいけれど、ずっとあたっているのは無理、手がこう感じる温度が、約170℃~180℃です。
この状態の鍋に、中華お玉1杯分の油を入れます。
鍋をゆっくり回しながら、鍋肌全体に、しっかりと油を馴染ませます。
温度を確認するために、途中でネギの切れ端を入れてみて下さい。
ネギの表面の色が、ゆっくり「キツネ色」になったら、油の温度も、約180℃です。
これ以上温度が上がってはいけませんので、ちょっと火加減を弱くします。
ここでもう一度、手を鍋にかざして、この温度をしっかりと覚えて下さい。
何故かって?
人間のセンサーは、一生使えるからです。
これって、料理上手になるための、大きなポイントです。


この油を、一度オイルポットに戻し、チャーハン用の量の油を鍋にいれ温めて、いよいよチャーハン調理の開始です。
プロは、最初に溶き卵を鍋に入れ、半熟状態になるや否や、ご飯を入れて、一気に混ぜ始めますが、普通の人はプロほどのスピードはないですし、あの見事な鍋ふりはまず無理です。
普通の家庭で、失敗せずに、卵とご飯がきれいに混ざったチャーハンを作るには、炒める直前に卵とご飯をボールで混ぜておきます。
それを、全部鍋に入れ、お玉でかき混ぜながら炒めます。
この方法で、完全にパラパラになります。
ご飯一粒一粒が完璧にタマゴで覆われ、そのタマゴが油を吸収する、その結果米粒同士がくっつきにくくなります。そしてパラパラのチャーハンになります。

パラパラな「卵ご飯」が出来たら、具を入れ、塩で味を調え、さらに炒めます。
最後に香りを付けるために、醤油を少々回しかけ、軽く炒めたら出来上がりです。


パラパラチャーハンを作るためには、もう一つ大切なポイントがあります。
それは、一度に炒める「量」です。
プロのように、強い火力を使いこなす技術は、一般家庭では普通は無理です。
ですから、一度に炒める量を二人分までにしましょう。
この意味は、熱量に対してご飯の量を多くし過ぎないということです。
どうしても、一度に多く炒めると、ご飯の水分が飛びにくく、ご飯一粒一粒がパラパラにほぐれるチャーハンはなかなかできないのです。


では、パラパラチャーハンにチャレンジしてみてください。



Q:「焼く」と「揚げる」はどう違うの?

「焼く」と「揚げる」の違いを、正確に意識して、調理している方って、実は意外と少ないのではないでしょうか?
加熱調理の応用編ですから、しっかりと理解しておきたいですね。


「焼く」と「揚げる」の違い、殆どの方が意識せずに、焼いたり、揚げたりしているのだと思います。
でも、違いを知っておくと、調理のレベルが確実にアップします。
普段、見過ごしていることに気が付くと、調理の腕は間違いなく上がってきます。
しかしこれは、調理に限ったことではなく、どんな事についても言えることですね。



では、「焼く」から説明しましょう。
「焼く」という調理法のポイントは四つあります。 
①食材に含まれる水分を奪う、つまり「脱水」です。
②「焼く」ことで、香ばしい香りがします。
③こんがりきつね色した、美味しそうな「焼き色」が食材表面につきます。
④食材の身がしまります。



「脱水」:食材を焼く温度は、もちろん食材によって違いますが、150度~180度という範囲に収まります。 
つまり、「焼く」温度は100度以上ですので、食材に含まれる水分は水蒸気となり、食材の外に出て行きます。 その結果、食材中に含まれる水分は、焼く前と比べると、相当に減ります。

 
「香り」:焼くことで、食欲をそそる、よい香りがします。
この「香り」の正体は、三つの要素によって出来ています。 
(A)カラメル
プディングを作ったことがある方はすでにご存知ですね。
糖分は、加熱されると、溶けてきて、次第に透明なアンバー色になります。
この時、良い香りがしますが、この状態を「カラメル」と言います。
この香りが一つ目の要素です。
(B)油/脂の香り
食材をフライパンで焼く時、フライパンに「油」又は「脂」を敷きます。 
お肉にはもともと「脂」があります。 
「油」も「脂」も、加熱され150度を超えると、化学反応が起きて、カラッとした「油」や「脂」独特のよい香りがし始め、170度~180度でもっとも良い香りがします。 
この香りが二つ目の要素です。 
(C)メラノイジン
糖分とたんぱく質が一緒にある時、又はアミノ酸と糖分が一緒にある時に、加熱温度が150度を超えると「アミノカルボニル反応」という化学反応が起きます。この時、大変食欲をそそる匂いがする「メラノイジン」という物質ができます。 
日本の落語には「うなぎ屋の前」に立って、匂いだけを嗅ぎながら御飯を食べる、という噺がありますが、この匂いがメラノイジンの香りです。 
これが三つ目の要素です。



「焼き色」:「香り」の三つの要素が全部揃った時、食材の表面は、美味しそうな「こんがりキツネ色」になります。 
「こんがりキツネ色」=「美味しく焼き上がったサイン」ということです。
「目で食べる」「見て美味しい」という言葉があるぐらいですから、やはり料理は「目にも美味しく」なくてはいけませんね。
これも大切な要素ですから、是非覚えておいて下さい。



「食材の身がしまる」:食材に含まれる水分が蒸発して少なくなり、たんぱく質などが加熱されて固くしまる、その結果歯ざわりが良くなります。 
「食感」がいいと言いますが、このことですね。
但し間違えてはいけませんが、固ければ良いいというものではありません。
自分が美味しいと感じる固さ、心地よい固さ、これが大切です。
固さは、食材への火の通し方で調節出来ますので、食材の表面は「カリッと香ばしく」、中は「アツアツのジューシー」、これが理想の焼き上がりであることを覚えておいて下さい。



「香り」「焼き色」「食感」、この三つに「食材の中はアツアツでジューシー」が加わって、「美味しい焼き物」の完成になります。 温度も味のうちですから、熱いうちにいただきましょう。



次は「揚げる」調理法です。 
なんのために揚げるのでしょう? 
もちろん美味しい料理を作るためですが、美味しさにも様々あります。 
「揚げる」目的は二つあります。 
①香ばしい揚げ油の香りがする、
②揚げ物でしか得ることのできない「食感」の良さ、この二つです。



「香ばしい揚げ油の香りがする」:「油」や「脂」を軽く見てはいけません。 
肉やさんのコロッケ、ミンチカツが美味しいわけを考えたことありますか? 
お家でコロッケを揚げても、なぜかあの「肉屋さんのコロッケ」の美味しさが出ませんね。
理由は簡単です。 お家でコロッケを揚げる時に使う油は、普通の家では「サラダ油」が圧倒的に多いのですが、お肉屋さんは「ラード」で揚げるのです。 
加熱したサラダ油の香りと比べてみて下さい。「香り」が全く違います。 



天ぷらの場合でも、人によっては「胡麻油」「菜種油」など、好みが分かれます。 
揚げ物に使用する「油」「脂」、香りだけでもいろいろとありますね。 



「揚げ物でしか得ることのできない『食感』の良さ」:揚げ物調理の場合は、150度~180度といった高温の「油・脂」で、食材全体がくるまれてしまいます。
その結果、「焼く」調理法と比べた場合、食材に含まれる水分の蒸発量がはるかに多くなります。
食材が衣で覆われていても蒸発する水分量は多いですが、空揚げの場合は一段と蒸発が早くなりますし、蒸発量も多くなります。
その結果、焼き物とは異なって、表面が「軽くサクッ」、となります。 
一方の焼き物の表面は、「香ばしくパリッと」です。 
この食感の違いこそが揚げ物の特徴です。 
天ぷらの衣をなぜ軽くするのか、衣から水分が蒸発し、変わりに油が入れ替わります。 この食感が、限りなく軽く、しかもサクサクしていてもろいこと、これこそが揚げ物の美味しさの重要なポイントです。 揚げ物にしかない「食感」です。 
だからこそ、他の調理法ではさして美味しい味にならない食材が、揚げたら絶品なんていうものになったりするのです。 魚の「ぎんぽう」「はぜ」「きす」などは、まさにその代表です。


100度以上の温度で調理する「乾熱調理法」「脱水調理」という意味では、「焼く」も「揚げる」にも共通する部分も多々あります。 しかし違う部分もあります。 ここで一番大切なことは、「より美味しい」料理にするにはどの調理法を選択するか、ということです。



料理の大切な基本になりますが、美味しい料理にとって一番の基本は、なんと言っても「良い食材」です。 
これを調理する時に大切なのが、「食材の長所を上手に引き出し生かすこと」そして「食材の欠点を長所に変える、あるいは欠点を消す」、この二つです。
だからこそ様々な加熱法が考えられてきたのですね。



いろいろなことに興味を持ち、意味を知って行く、そうすると料理はどんどん楽しくなります。 
基本知識をしっかりと身に付ける、いろんな知識をどんどん吸収する、そして自分の想像力を豊に発揮する。 
料理以外にこんなことが楽しめるジャンルはそうそうめったにあるものじゃありません。
どうぞ、もっともっと料理を楽しんで下さい。
プロフィール

岡山晄生

Author:岡山晄生
--Okayama Akio----------
株式会社リバーライト代表
調理道具研究家・家庭料理アドバイザーとして講演・執筆活動なども行なっている。著書に『料理のきほん食の常識』(グラフ社)等


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